日本の近代経済を牽引した偉大な実業家、渋沢栄一。
彼が残した著書「論語と算盤」は、その経営哲学の集大成といえる重要な文献です。

渋沢は、儒教の経典である「論語」と、商取引に欠かせない「算盤」を組み合わせ、事業経営における倫理観と実践的知恵を説きました。

まず、「論語」の思想から導き出された渋沢の信念は、「人格の高潔さ」と「社会的責任」にあります。
彼は、事業家としての成功には、まず自らの人格を磨き上げ、社会的責任を果たしていくことが何よりも重要だと考えていました。

一方で「算盤」の側面からは、経営の実際的な知恵が説かれます。
事業には信用が何より肝心であり、何事においても細かな計算と賢明な判断が求められると指摘しています。

つまり、渋沢が説く経営哲学とは、人格と倫理観に基づく「論語」の精神と、冷徹な判断力と計算力を意味する「算盤」の実践的知恵が融合したものだったのです。

単なる事業の成功だけでなく、社会的責任を果たしつつ、健全な経営を維持するためには、この両者のバランスが重要不可欠だと渋沢は説きました。

今日、企業の社会的責任が強く求められる中で、渋沢栄一の「論語と算盤」の思想は、私たちに大きな示唆を与え続けているのです。